ホリスティック豆知識Blog
2019年11月21日(木)
愛犬のためのホリスティックグルーミングレッスン 【5】歯磨き
【根拠あるやさしいグルーミング】をテーマに、犬の身体の構造や動きを研究し、グルーミングを行うトリマーの石井あゆみさん(トリミングサロン「leaf dog(リーフドッグ)」経営)に、飼い主さんに知っていただきたいグルーミングの基本についてシリーズでレクチャーしていただきます。
定期的なグルーミングは人と暮らす今の犬たちにとっては、必要不可欠なこと。
でも方法を間違えると、とても負担のかかることになります。
そして、その原因となっているのが、飼い主さんの日頃の間違った方法だったということも珍しくありません。
意外と知らなかったことや、間違って行っていたことなど、新たな気づきが満載です。
犬の身体の構造、特性を知り、そのうえで、犬が一生必要とする身体のケアを犬にも飼い主さんにも負担をかけないやさしい時間にするために、ぜひお読みください。
犬に歯磨きは必要か?
どうして犬に歯磨きが必要なのでしょうか?
犬は人の手によって改良されてきました。
小型犬の口の中は、歯の本数が少なかったり、顎のかみ合わせが悪かったり、歯茎と唇の隙間がとても狭かったりと、「体の小型化は成功したが、口の小型化は失敗した」と言われています。
また、犬たちの生活の変化、【噛む】という行為が減ったことで、唾液量も少なくなり、ドライマウスになりがちだとも言われています。唾液には抗菌作用があり、この抗菌作用のおかげで口腔内の悪玉菌が増えすぎないように、絶妙なバランスを保ってくれています。しかし唾液が少ないことで、口腔内環境が悪くなり、それは歯周病につながります。そして歯周病は歯を失うだけでなく、顎の骨を溶かし、全身の健康にも影響するのがわかってきています。
一見怖い歯周病ですが、唯一歯周病だけが予防することで防げる病気と言われており、現代に生きる犬たちにとって、歯磨きは避けて通れない道といえます。
でも、歯磨き方法で悩むオーナーも多いのではないでしょうか。。。
今は雑誌やネットでさまざまな歯磨き方法が紹介されています。大切なのは、どれが正解かではなく、【パートナーに合ったやり方】を探すことと、【やり続けること】です。
リーフドッグ流の歯磨き方法
ここではリーフドッグ流の歯磨き方法をお伝えしたいと思います!
3つのポイントでお伝えします。
1.口周辺を触ることに慣れさせる
2.歯ブラシが口に入ることに慣れさせる
3.磨くよりヌメヌメを取り除くことを大切に
1.口周辺を触ることに慣れさせる
まず初めにしたいことは、口の周辺を触らせてくれるかどうかです。
もしパートナーが嫌がるようでしたら、トレーナーさんと一緒に口の周辺を触らせるトレーニングをするのが良いでしょう。
基本的にはゆっくりと手を動かすことが大切で、急に触ったり、早い動きで唇をめくったりしないことが大切です。
首や肩などパートナーが受け入れやすい部分からゆっくり触っていき、口元まで触っていくようにしましょう。
頬や顎骨の周辺をゆっくりゆっくりマッサージしながらお口周辺を触っていくと、唾液腺が刺激されるので、唾液が出やすくなる効果も期待できます。
口を触らせるようになってからも、口周辺をマッサージしてから歯磨きするというルーティンを作るといいですね。
2.歯ブラシが口に入ることに慣れさせる
オーナーが触ることにパートナーが慣れてきたら、次は歯ブラシを口に入れる練習です。
歯ブラシは、できる限り柔らかい毛のものを選択しましょう。
口の大きさに合わせたヘッドの大きさを選んでください。
大切なことは、歯ブラシを動かさないこと。初めて口の中に歯ブラシを入れる経験をするときは、犬にとってかなりドキドキです。ブラシのチクチクにびっくりしすぎて、「とってもいや~っ!」となってしまわないように、ブラシを口に当てる、歯茎に当てる、といったところから始めましょう。
優しく声をかけ、ほめながら行っていきましょう。
3.磨くよりヌメヌメを取り除くことを大切に
歯磨きというくらいなので、しっかり磨かないといけない!と頑張ってしまうオーナーがいらっしゃいます。でも、歯茎はとても敏感で、無理な力が加わると、痛めてしまうこともあります。歯を磨くときの歯ブラシの強さは20gです。
実際に計りで20gを計ってみると、とても軽いちからで行うことがわかります。
しかし、つい熱心に磨かないと!と思えば思うほど、力が入ってしまいます。
【磨く】ことは大切ですが、イメージは磨くことよりも、歯や歯茎についたヌメヌメを取り除くというイメージで行ってください。
このヌメヌメの正体は、バイオフィルムと言って、菌がテントを張って、心地よく過ごしているお家のようなものです。このヌメヌメを取り除くことがとっても大切です!
また、唾液が少ない小型犬に乾いたブラシを使用することでも、歯茎を痛めやすくなります。できれば体温と同じくらいの温度のぬるま湯を歯ブラシに十分に染み込ませ、おくちの中を潤わせながらヌメヌメを取り除いてください。歯ブラシはこまめにぬるま湯ですすぎながら行うと良いでしょう。
歯ブラシやぬるま湯の刺激で唾液線も刺激され、唾液を出すことを促すことも期待されます。ゆっくりゆっくり行うことが大切です。唾液が出れば歯磨き効果を最大にします!
更に歯磨きの効果を長続きさせたいときは、口の中の悪い菌を減らすような様々なスプレーやジェルなどが販売されています。口の中のヌメヌメを取り除いた後に、塗布すると、より効果がありますので、お試しください。
※歯磨きをするときの注意
歯茎が赤くすでに歯周病が進行している場合は、獣医師と相談の上行ってください。
歯磨きで歯石を取ることはできません。無麻酔で歯石を取ることは、歯周病の治療にはならず、パートナーにとってもつらい経験となってしまいます。
獣医さんとよく相談の上、歯周病の治療を麻酔下で行ってもらいましょう。
歯磨きがイヤイヤになっているパートナーの場合
今まではやらせてくれたのに、最近嫌がるようになった・・・
そんなことありますよね。
イヤイヤになる理由は主に以下の3つです。
1.ブラシの圧が20g以上で痛い
2.歯茎が赤くなってブラシが当たると痛い
3.褒めてもらえなくなった
「前はできていたのに。。。」ということは、何かきっとパートナーにとって、歯磨きが嫌になるきっかけがあったはず。何が原因か探ってみましょう。
1.ブラシの圧が20g以上で痛い
人は初めての出来事は何でもおっかなびっくり慎重に行うことが多いですが、慣れてくると、ついつい力が入りがち。一生懸命な気持ちも相まって、ついつい力が入っていませんか?
時々計りを使用してブラシの圧の重さを計ってみましょう!
20gはかなりサワサワ~という感じです!
2.歯茎が赤くなってブラシが当たると痛い
2の歯茎に何らかの原因で赤みがある場合は、獣医さんに相談しましょう!
歯磨きをする前に、明るいところで歯茎の色をチェックしてみましょう!
赤いところがあったり、何かできものができていたり、歯茎に異常があるかもしれません。
3.褒めてもらえなくなった
3の褒めてもらえないということは、初めのうちはオーナーも一生懸命なので、褒めてあげることは多いのですが、ついつい習慣となり始めると、褒めることが少なくなり、できて当たり前・・・となってしまうことがあります。
歯磨きが作業として習慣化してしまうと、犬にとってはつまらないことになります。
褒めてもらえるから、多少の嫌なことも我慢ができるもの。
ぜひ初めて歯磨きができたときを思い出して、大いにパートナーを褒めて一緒に喜んでみてはいかがでしょうか?
口の中から健康を意識し、年齢を重ねても健康でいてほしいですね!
<バックナンバー>
愛犬のためのホリスティックグルーミングレッスン 【1】爪切り
愛犬のためのホリスティックグルーミングレッスン 【2】ブラッシング初級
愛犬のためのホリスティックグルーミングレッスン 【3】ブラッシング中級・上級
愛犬のためのホリスティックグルーミングレッスン 【4】耳ケア
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◆リーフドッグ石井 あゆみ
ホリスティックケア・カウンセラー
JKC A級トリマー
日本ペットサロン協会アンバサダー
専門学校を卒業後2つのお店で修行をし、その後、2009年27歳で起業しleaf dogを開業。
論理的にとことん優しいグルーミングを日々研究している。
国内外のコンテストでの受賞暦も多く、高い技術を持つ。
業界誌トリムの連載を2017年8月号から開始。
ホリスティックケア・カウンセラー養成講座では、「犬と猫に負担のないグルーミング」(ブラッシング、歯ブラシ、爪切り、シャンプーなど)を学べます。