ホリスティック豆知識Blog
2018年10月24日(水)
犬のすごい能力に気づく『ノーズワーク』の世界へようこそ!Vol.1
みなさん、「ノーズワーク」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「ノーズワーク」とは、犬のストレスケア、またはシニア期の行動エンリッチメントを高めるための、犬の嗅覚を使ったゲームのことを言います。当講座では、12月1日(土)、スウェーデン在住のドッグジャーナリスト・藤田りか子氏より「ノーズワーク」のワークショップを行います。それまでに2回、藤田さんより「ノーズワークの素晴らしさ」をお伝えいただきます。
このコラムを読むだけでも、パートナーとの時間の過ごし方を見直したくなるはずです。
嗅ぐ、それが犬の生き方であり楽しみ
愛犬が散歩途中に突然地面を興味深そうに嗅ぎ出すことがあります。私たちの目には何があるかまったくわからないのですが、犬たちにははっきりと見える…というか何か「におう」ものがそこにあるようです。
そう、犬は鼻という器官を通して「におい」でなんでも確認をするのですね。それはちょうど私たちが「なんだろう、あれ?」と思った瞬間に目を凝らして視覚でものごとを捉えようとするのと同じ感覚ともいえます。と考えると、犬にとって嗅覚がどんなに大事なものであるか想像に難くはないでしょう。私たちにとって視覚はなくてはならないものです。
人は何かを確かめるために「視覚」を使うだけではなく、それを通して「楽しむ」こともします。たとえば美しい風景、絵画、そして綺麗なデザインなどなど、それらを見ること自体が目を喜ばせます。そして私たちの人生をも豊かにしてくれます。となると犬たちの犬生だって嗅覚を刺激してあげれば、同じように豊かにしてあげられるのでは?
走りながら草原の中を嗅ぎ、ハンターが撃ち落とした獲物を探すラブラドール・レトリーバー。犬にとってはすべてが「ノーズワーク」!
特定のにおいをさがさせるゲーム、ノーズワーク
そこで「ノーズワーク」の登場なのです。
特定のにおいを覚えてもらい、それを隠した場所を探してもらうというゲームです。「嗅ぐ」という行動に加えて「探す」というこれまた犬ならではの、狩猟行動を合体させた遊びであることにも留意してください。
ノーズワークをするミックス犬のテーオ。車のドアの隙間ににおいを探し当てた!
狩猟行動というのは獲物への襲撃だけを指すわけではありません。襲うためにはまず獲物を探し出す必要があります。探す際には嗅覚が大活躍します。「嗅覚で探す」というのは生存するために必要な行為ゆえ犬にとっては「本能」ともいえるでしょう。今では飼い主がきちんと食事を与えますから、食べるために「探す」必要はありません。
しかし家庭犬とはいえ、原始の犬らしさを失ったわけではありません。その欲は今でも十分に備わっています。その欲を飼い主にとってもポジティブに満たしてあげれば、犬と人というのはもっとハーモニックに暮らせるはずです。
多くの国のノーズワーク競技会のルールでは、アロマのにおい[※1]を探させます(競技会にでるのでなければ、別にアロマではなくともいいのですが)。これは食べ物と異なり、犬が本能的に「探しだしたい」と思うにおいではありません。そしてここがポイントなのですね。犬の嗜好に全く関係ないにおいを探させるというのは、実は人と犬との「関係」を作り出すということでもあります。
[※1] スウェーデンのノーズワーク協会のルールではアロマオイルを作るときに発生する芳香蒸留水を使います。アメリカの多くのノーズワーク協会ではそのままアロマオイルをつかいます。
そのカラクリはというと、アロマのにおいを探し出せたら、飼い主さんから「おいしいおやつや楽しいおもちゃがでてくる、という仕掛けにしておくのです。すると犬はその楽しいことをモチベーションにして、かつ自分の得意技(=嗅覚で探す)を駆使して一生懸命に探そうとします。こうして犬は嗅覚を使っての達成感を味わうだけではなく、「人と何かをする!」という楽しさもゲームの中から得ることができるのです。
爆薬探知犬のトレーニング中。イギリスの警察犬。
実は空港や国境などで働いている麻薬探知犬や爆薬探知犬も、ノーズワークと同じコンセプトのゲームをハンドラーと行っているのにすぎません。決して税関の犬は「この世の正義」のために働いているわけではありません。麻薬や爆薬は本来彼らにとって意味のないにおいです。
しかし一旦「探し出せば楽しいことがハンドラーからやってくる」を学習すると、探すこと自体がもう楽しくてしょうがない遊びになるというわけです。だから彼らの嬉々としながら働いている姿があるのです。
次回はさらなるノーズワークの詳細、そしてその遊び方についてお話をしましょう。
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