ホリスティック豆知識Blog
2018年11月14日(水)
犬のすごい能力に気づく『ノーズワーク』の世界へようこそ!Vol.2
日本ではまだあまり知られていない、犬の「嗅覚」を存分に発揮できるスポーツ「ノーズワーク」。
前回に引続き、ノーズワークの魅力や素晴らしさについて、スウェーデン在住のドッグジャーナリスト・藤田りか子氏にお話して頂きます。
愛犬の鼻に頼ってみませんか?
ノーズワークと言うと「隠されたトリーツを探させる遊び」と理解されている方も多いかもしれません。鼻を使わせる、という意味でトリーツ探しもノーズワークです。一方でドッグ・スポーツとしての「ノーズワーク」というものも存在します。2006年にアメリカで誕生しました。正式には「K9 Nose Work®︎」と呼ばれており、これをヒントに現在多くの国が「ノーズワーク」をアジリティなどと同様にひとつのドッグスポーツとして楽しんでいます。各国独自のルールを採用しているものですが、ひとつ共通しているのは「隠されている特定のにおいを犬が時間内に探し当てること!」です。
楽しいゲームだと思いませんか?犬にしか「見えない」ものを見つけてもらうという遊び。競技において私たちハンドラーはまったく「盲目」状態、どこににおいが隠されているかわからないようになっています。これはつまり完全に愛犬の嗅覚に頼らなければならないということを意味します。その時に体験できる「私と愛犬のチームワーク感」!これはただ普通に生活しているだけでは得られない特別なフィーリングです。
私が住むスウェーデンは、世界でも爆発的にノーズワークが広まった国のひとつです。すでに2014年にはスウェーデン・ノーズクラブが発足。現在会員数5千人ほど。2年前(2017年)にはスウェーデン・ケネルクラブのオフィシャル・ドッグ・スポーツにもなりました。競技会は必ずどこかで毎週末行われています。時には参加枠が100ペアの「メガ」競技会もあり、それでも定員以上の人が申し込むので、出場するのに抽選となることもしばしば。私自身も愛犬とともに1ヶ月に一度は競技会に参加する「ハマって」いるペアです。
探すにおいとエリアについて
前述した特定の「におい」となるものですが、アメリカでは精油(アロマオイル)の、 バーチ(白樺)、アニス、クローブを探させます。しかしバーチの精油に関してはアメリカの獣医師からも毒性があり危ないとの警告が出されており、スウェーデンでは途中でそれらの精油の使用を中止にしました。その代わりにユーカリ、ローレル(月桂樹)、ラベンダーのエッセンシャル・ウォーター(芳香蒸留水)をターゲット臭(探すべきにおい)として使うことにしています。
ターゲット臭となる「におい」の1つであるユーカリの芳香蒸留水。においは例えば、写真のように綿棒の先端に含ませて、磁石の付いたボトルに入れます。そしてそれを表面がメタルのものに貼り付けて隠します。
競技のレベルはNW1(Nose Work 1)からNW3のクラスに別れています。初心者レベル(NW1)から上級者レベル(NW3)によって探すターゲット臭と数は異なります(表1参照)。アメリカではさらにエリート・クラスというのも設けられています。もちろん上に行くほど数は増え、一番上のレベルでは捜索エリアにまったくにおいがないパターンも。 しかし正解を得るには、審査員に「なかった」ということを報告しなければなりません。
アメリカおよび北欧など多くの国では、サーチを以下の4つの課目(エレメント)に分けて競技をおこないます。
1. コンテナー・サーチ(においの隠されている容器を見つける)
2. インテリア・サーチ(屋内に隠されているにおいを見つける)
3. エクステリア・サーチ(屋外に隠されているにおいを見つける)
4. ヴィークル(車)サーチ(車両の外側に隠されているにおいを見つける)
ひとつのエレメントにつき25点、4つのエレメントですべて正解を得ると100点満点を獲得できるという仕組みです。ただし、ひとつのタイプのエレメント(たとえばコンテナーなど)に絞って、4サーチ行うという競技会も存在します。これをエレメント・スペシャリティ・トライアルといいます。
国/競技レベル | アメリカ | 北欧(スウェーデン、ノルウェー) |
NW1 (Nose Work 1) | バーチ | ユーカリ |
NW2 (Nose Work 2) | アニス バーチ、 またはそのコンビネーション |
ローレル ユーカリ またはそのコンビネーション |
NW3 (Nose Work 3) | クローブ アニス バーチ またはそのコンビネーション |
ラベンダー ローレル ユーカリ またはそのコンビネーション |
表1 ノーズワーク、国別、レベル別のターゲット臭
納屋だって船の中だってサーチエリア!
コンテナー・サーチというのは、みなさんもどこかで見たことがあるかもしれません。床にボックスを何個もおいて、その中ににおいが隠された箱を犬に探し出してもらうことです。初級者レベルでは、ひとつの箱にしか隠されていませんが、次のレベルでは、2つ。さらにターゲット臭とは異なる「誘惑」の匂いも隠されており、それにひっかからないように犬がトレーニングされていることが大事です。アメリカのルールではトリーツなども「誘惑臭」として使われています。
コンテーナー・サーチの様子。ボックスのふたは完全に締められた状態で行います。
インテリアサーチの様子。倉庫く競技会でもよく使われる環境です。隠しどころ満載!練習の時は楽しいのですが、競技会の時はドキドキ!
インテリア・サーチとは、屋内でにおいを見つけること。普通のお部屋であったり、オフィスの中、倉庫の中、ガレージの中であったり。私が参加した競技会には、船の中や酪農家の牛の納屋というのもありました。そう、ありとあらゆる屋内環境がサーチエリアとなるのです。エクステリア・サーチすなわち屋外での捜索も環境の種類は問いません。同時に嵐であろうと雪であろうと関係なく競技は行われます。集中豪雨の中やマイナス15度の環境でサーチをしたことがありますが、犬たちはちゃんと見つけるものです。犬の嗅覚とは本当にすごいものですね。
車両サーチの対象はさまざまな「車輪のついた物体」。トレーラーはもちろん芝刈り機だって含まれます
そしてノーズワークの中でももっとも「かっこよく」見える課目はやはりヴィークル・サーチでしょう。まるで本当の麻薬探知犬の作業に見えるシーンです。しかし、ノーズワークではあくまでも車両の外だけ。ドアを開けて中を捜索することはありません。また、車両というぐらいですから車だけではなく、トラックやバスのような大型車はもちろん、トラクター、芝刈り機、自転車、トレーラー、そして手押し一輪車をはじめ電車や飛行機など車輪があるものすべてが含まれます。
こんな厳寒な環境の中でもサーチは行うことができる。筆者の参加した競技会より
(文・写真:藤田りか子氏)
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