ホリスティック豆知識Blog
2021年10月12日(火)
「愛玩動物看護師」が国家資格になります
現在、動物病院で看護師をされている方やこれから目指す方はもちろん、動物看護師が国家資格になるという話を聞かれた方は多いと思います。
ただ、それがどんな意味を持ち、資格取得のためには何をすればいいか、までご存じの方は少ないかもしれません。
動物業界にとって大きな意味を持つこのことについて、概要だけでも理解していただくために、都内に病院を持ち、専門学校で講師もしている株式会社ベック・ジャパンの近先生に、解説していただきます。
動物病院に行ったとき、優しく話しかけてくれる動物看護師さん。皆様にとって、獣医師よりも話しかけやすい存在なのではないのではないでしょうか。私自身も獣医師であり、動物病院で働いていた時にはとても助けてもらった経験があります。
そんな動物看護師さんが、2023年には国家資格になります。正確には「愛玩動物看護師」という名称になるのですが、ここでは皆様に耳なじみのある「動物看護師」という名称でお話しさせていただきます。
むしろ、これまで国家資格ではなかったことに驚かれた方もいるかもしれません。そして、動物看護師の読者の方は、資格を得るための国家試験というプレッシャーに不安を感じている方もいると思います。「愛玩動物看護師」がどんな資格になるのかは、まだ決まっていないことも多いのですが、今わかる範囲で、動物看護師の国家資格化についてお伝えさせていただきます。
1.国家資格になると何が変わるの?
これまで、獣医師法や獣医療法という法律の下制限され、動物に獣医療行為をするということは獣医師にしか認められていませんでした。動物看護師の方たちは、たとえ専門の学校で様々な知識を学んでいたとしても、あくまで獣医療行為ではないことしか、してはいけません。例えば、動物を保定したり、入院している動物のご飯を用意したり、血液検査の機械を操作したり、といったことは、動物に危害を与える恐れがないため、法律上獣医療行為ではなく動物看護師の方たちがしても良いことです。
国家資格になることで、獣医療行為の一部を動物看護師も行うことができるようになります。どこまでの獣医療行為を動物看護師の業務の範囲にするかはまだ決まり切っていませんが、採血やカテーテルを使った採尿、マイクロチップの装着などができるようにすることが検討されています。
もちろんこれまでも、獣医師にとっても飼主にとっても欠かせない存在であった動物看護師さんですが、今まで以上に頼れる存在になることは間違いありません。
2.どうしたら動物看護師になれるの?
業務の範囲が広がるということは、より専門的な知識を身に着ける必要があることでもあります。今動物看護師として働いている方たちは、専門学校(多くが2年生)や大学などで動物看護師としての勉強をしてきた人もいれば、高校や動物医療とは関係のない学校を出て、現場で知識を培ってきた人たちもいます。
国家資格になると、カリキュラムが統一され、3年制以上の専門学校か大学で国家資格専門のカリキュラムを学んだ人しか、国家試験の受験資格がなくなります。
どの学校がこの国家資格を受けられる指定校になるかは、申請が始まっていないので確かなことは言えませんが、多くの学校が指定校になれるよう準備中のようです。
「でも、今まで働いていた動物看護師さん達はどうなるの?」って思いますよね。大丈夫です。今働いている人たちも、学校に通いなおさなくても国家資格を受験するチャンスがあります。この法律(愛玩動物看護師法)が施行される2022年5月から5年間は、移行期間として、他のルートから受験する機会が用意されているのです。
3.5年間の移行措置について
移行措置の対象者は大きく2つに分かれます。
1つは、法律が施行されるより以前に動物看護師の学校(※)で勉強した人たち、もう1つは、専門の学校は卒業していないけれど現場で動物看護師の業務を、5年以上経験してきた人たちです。
(※学校の範囲(卒業年度、学校名)についてはまだ確定しておりません)
前者の場合、講習会に参加しなければいけません。この講習会ですが、現在30時間程が想定されているようです。オンラインで参加できるような設計が予定されているのですが、働きながらこの講習を受けなければいけないので、受験を予定している方は仕事の合間を縫ってこの講習会を受験する必要があります。
後者、つまり、現場経験で受験する方たちは、上記講習会に加えて予備試験を受ける必要があります。つまり、学校で学んでいる人たちと同等の学びをしていることを予備試験で証明する必要があるのです。
なぜ今まで働いていた動物看護師さん達が本試験の前の講習会や予備試験を受けなければいけないのでしょうか。それは、上述のように、国家資格化することで獣医療行為という今まで以上に責任のあることに業務が拡大するからです。採血や採尿をするためには解剖学の知識が、投薬や点滴をするには薬理学や生理学の知識が必要になります。ただ処置をするために必要な技術を知るだけでなく、拡張した業務に必要な知識を身に着けて初めて、安全な処置をすることができるようになります。国家資格になるということは、ただ喜ばしいことだけでなく、大きな責任も伴うことなのです。
4.アメリカとの比較
私は日本の獣医療業界にとって今回の国家資格化は大きなターニングポイントになると考えています。
日本より早期に動物看護師が公的資格になったアメリカでは、州ごとに動物看護師の認定が行われるだけでなく、さらに専門認定資格(救急救命、麻酔・鎮痛、栄養学など)が16種類もあります。専門認定資格を取得することで、より高度な獣医療行為を行うことができます。当然、それだけ責任も伴うようになってくるのですが、動物看護師としてキャリアアップする道が日本より明確であるということができると思います。
私が現場の動物看護師さんと話をしていても、年々動物看護師としてスキルアップをしていることは自覚していても、その先何を目指したらいいかがわからない、という声をよく聞きます。実際、結婚出産などのライフスタイルの変化のタイミングで動物看護師以外の仕事に転職してしまう動物看護師さんが多いと感じます。
国家資格化し、業務範囲が拡大するということは、それだけ動物病院の中でも重要な存在になるということです。そのキャリアをさらに後押しするような専門資格が今後整備されていくことに期待しています。それにより、一生の仕事として動物看護師を続けてくれる人達が増えていってくれるのではないかと考えています。
最後に
動物看護師が国家資格化するということは、獣医療業界において大きな転機です。それにより、業界がどう変わっていくのかは、まだ誰もわからないことではありますが、動物看護師という存在がこれまで以上に獣医療において重要な存在になっていくことだけは確かであると思います。
とはいえ、動物看護師の皆様にとっては、国家資格に受かるかどうかという不安と業務の責任が増えることによるプレッシャーの方が、現段階では期待よりも大きいのではないかと思います。ですが、動物看護師の皆様には、動物看護師という仕事がますます魅力的になるように、国家資格を通過点としてどんどんステップアップしていっていただきたいと願っています。
また動物看護師ではない読者の皆様には、そんな動物看護師のお仕事にぜひ興味を持っていただき、動物病院で働く彼ら彼女らをそっと応援してあげていただければ幸いです。
なお、愛玩動物看護師に関しての最新情報は農林水産省、環境省のホームページからご覧いただけます。以下のURLをご参考ください。
農林水産省ホームページ
https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/doubutsu_kango/qanda.html
環境省ホームページ
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/kangoshi/qa.html
Ve.C.動物病院グループ 獣医師 近 朋之
動物看護師はある意味、オーナー(飼い主)・パートナー(愛犬愛猫)にとって獣医師よりも身近な存在。そんな動物看護師さんたちが適切な教育を受け、資格として国から認められることは、間違いなく大きな前進だと思います。動物たち、オーナーに寄り添い、一生の仕事として活躍されることを願うと同時に、私たちもそんな皆さんをステップアップの学びで応援していきたいと思います。
最後に、近先生が運営されている、動物看護士国家試験対策スクールをご案内します。興味のある方はご覧ください。
『愛玩動物看護師国家試験対策スクール』のご紹介
私は現在、株式会社ベックジャパンで動物病院の運営やマネジメントをする傍ら、動物看護師の専門学校で非常勤講師としても働いています。
そのため、多くの動物看護師の方、動物看護師を目指す方とお話しする機会がありますが、国家資格化に向けてよく聞くお声は、「何を勉強したらいいかがわからない」というものです。
長く現場で働いている人にとっては、久しぶりの試験勉強ですし、学生時代が割と最近であったとしても、カリキュラムが発表されたばかりで教科書も過去問もなく、どう手を付けたらいいかわからないという状況かと思います。
そこで、そんな動物看護師さんの合格をサポートするべく、株式会社ベックジャパンは他社と協業で「愛玩動物看護師国家試験対策スクール」を立ち上げました。私が、講師としての経験を活かし、全面的に監修をしております。ご興味のある方はぜひホームページをご覧いただければ幸いです。
【愛玩動物看護師国家試験対策スクール公式ホームページ】
https://vt.life-tail.com/